本日は、店舗コンサルタントの髙木 悠さんに話を聞いていきます。
なぜ、店舗コンサルタントとして独立をしたのか、そして、本を書いてよかったことは何かこの二軸で聞いていくことで、キャリアと本がわかるかと思います。
コンサルタントとして独立するためには原体験と想いが重要であるということがお話を聞いてよくわかりました。ノウハウの構築であったり、開業するまでの手続きの段取りであったり、そこからのキャリアの構築であったり、起業家にはやらなくてはならないことは多々ありますが、まずは出発点が大切。
そう思わされたインタビューでした。
早速髙木さんの経歴を紹介いたします。
髙木 悠
株式会社常進パートナーズ 代表取締役
飲食店、美容院、整体院などといった店舗ビジネスを営む会社に対して、のれん分け制度(社員独立支援制度)づくりやフランチャイズシステムの導入、経営計画策定、人事制度構築など、多店舗展開を進めていく上で必要となる仕組みづくりをサポートしている
著書は『21世紀型のれん分けビジネスの教科書』、『「まずは3店舗」の姿勢で始める小規模フランチャイズ展開の教科書』などがある。
なぜ店舗ビジネスのコンサルタントになろうと考えたか?
自分が「できること」と「やりたいこと」が重なったものが、店舗ビジネスのコンサルタントでした。
まず「できること」の視点でいうと、
高校生のときに大手居酒屋でアルバイトをはじめてから今に至るまで、ずっと店舗ビジネスに関わる仕事をしてきました。大学卒業後には、当時急成長をしていた大手焼肉チェーン牛角で店長やマネージャーとして経験を積ませていただき、店舗ビジネスの経営ノウハウを学ぶことができました。また、牛角はフランチャイズ展開をしていて、加盟企業の経営指導を担当するスーパーバイザーという役割もあるのですが、その仕事を経験する中で、コンサルタントとしての基礎を学ぶこともできました。
次に「やりたいこと」の視点でいうと、
店舗ビジネスに長く携わる中で「“会社の発展”と“社員の自己実現”を両立している会社を増やすことで、店舗ビジネスの地位向上に貢献したい」という想いがあります。
飲食店、美容院、整体院などの店舗ビジネスは、いまや世の中にはなくてはならない存在です。例えば、飲食店が世の中からなくなったとしたらどうでしょう。考えるだけでもおそろしいですよね。それだけ、飲食店が世の中に価値を生み出している証だと思います。
ですが、社会からは、生み出している価値に見合った評価を受けているとは言えないのではないでしょうか。
実際、私が大学卒業後、飲食チェーンへの入社を決めた際にも、「なんでそんな仕事を選んだの?」、「大学卒業したのに、もったいないね…」など、家族や友人、知人からネガティブな発言を受けたことを今でも鮮明に覚えています。
その結果、自分の意志で選んだ仕事であるにもかかわらず、徐々に仕事に自信が持てなくなり、自分の将来に夢や希望も持てず、仕事に対するモチベーションもゼロどころかマイナスになっている時期がありました。
社会への貢献度を考えれば、店舗ビジネスに関係している企業や人は、もっともっと社会から評価を受けるべきだと思います。適正な評価を得て、店舗ビジネスの社会的な地位を高めていかなければ、店舗ビジネスに明るい未来はないと思います。
この店舗ビジネスの現状を変えていくためには、企業が高い収益性を実現し、そこから生まれた原資で、社員が夢と希望を持って働くことができる環境を整備していく必要があります。「会社の発展」と「社員の自己実現」を両立している企業が増えていくことが、店舗ビジネスの地位向上につながるものと考えます。
コンサルタントとして活動していくことで、店舗ビジネスの地位向上に多少なりとも貢献していきたいと考えました。
現代のフランチャイズでおすすめの手法は?
スピーディーな多店舗展開を前提とするのではなく、「まずは3店舗」くらいの姿勢でフランチャイズ展開をスタートする方法をおすすめしています。
フランチャイズシステムは、「スピーディーに多店舗展開するためのツール」として発展してきました。加盟店の経営資源を活用することで、直営展開では実現不可能な速度での店舗展開、例えば3年間で100店舗展開といったスピード展開を目指すことが一般的でした。
ただ、このようなスピード展開を前提としたフランチャイズシステムの活用方法にはいくつか問題もあります。
例えば、このようなスピード展開を前提としたフランチャイズ展開は、導入ハードルが高く、チャレンジできる会社が限られてしまう、という問題があります。
3年間で100店舗展開するためには、それだけ多くの加盟希望者を集める必要があるわけですから、フランチャイズ展開する事業には、多くの人が「加盟したい!」と感じるだけの魅力が備わっている必要があります。
また、フランチャイズでは、本部は加盟店の開業サポートを手厚く行わなければなりませんし、開業後も加盟店の経営に寄り添って継続的にサポートを行っていかなければなりません。本部としてはスピーディーな展開に対応できるサポート体制を予め備えてく必要があります。
加えて、そもそもスピーディーな店舗展開はマネジメント等の難易度が高いため、成功させるためには、経営者や事業責任者に相応の経営手腕が求められます。
このようにスピーディーな多店舗展開を前提としてしまうと、フランチャイズ展開のハードルが高くなり、チャレンジできる会社が限られてしまうことになります。
スピーディーな多店舗展開を目指さずとも、フランチャイズシステムを活用することで、企業は
・理念やビジョンを共有した仲間を集めることができる
・加盟店に経営をまかせることで、店舗開業や管理の本部負担を低減できる
・加盟店の経営資源を活用することで本部経営リスクを抑制できる
などのメリットを得ることができます。
不確実性の高い現代にマッチした経営手法であり、もっともっと多くの企業にフランチャイズシステムを活用してほしいと思います。
現時点で1店舗展開の規模であっても、またそこまで収益性の高いビジネスモデルであっても、「まずは3店舗」の姿勢であれば、フランチャイズ展開にチャレンジすることは可能です。
ですから、「まずは3店舗」の姿勢でフランチャイズ展開をスタートし、状況を見ながら、段階的に店舗数を拡大していく方法をおすすめしています。
本を出すきっかけは? なぜ本を出したか?
「店舗ビジネスの地位向上」というビジョンに多少なりとも貢献するためです。
これまで『21世紀型「のれん分け」ビジネスの教科書』『小規模フランチャイズ展開の教科書』の2冊の本を出させていただきました。
これまで「店舗ビジネスの地位向上」を実現するために会社にどのような仕組みが必要かをずっと研究してきました。その結果、私が辿り着いた方策が、「21世紀型のれん分け」であり「小規模フランチャイズ」でした。
この考え方を1人でも多くの店舗ビジネス経営者に知ってもらいたいと考えたことが、本を出すきっかけであり、目的でもあります。
本を出してよかったことは?
想いを共有できる方々と多くの出会いを得ることができた点がよかったです。
『21世紀型「のれん分け」ビジネスの教科書』を出してから2年程度経過しましたが、書籍を読み、私の想いや考えに共感してくださった方からたくさん連絡をいただきました。
「21世紀型のれん分け」という考え方を多くの方に知ってもらうことができたことはもちろんのこと、そのような方々の実情をお聞きする中で、私の考えもより深めることができました。
また、自分がこれまで考えてきたこと、経験してきたことを体系化し、原稿に落とし込む中で、自分自身の思考を整理できた点もよかったです。
本を出そうと思っている人、店舗ビジネスをやろうとしている人に一言
>本を出そうと思っている人へ
「本を出す」ということは、正直かなり苦しい道のりでした。日々の仕事に加えて、10万字の原稿を書くわけですからね…。私自身、心が折れそうになったこともありました。
ただ、「自分の想いや考えを多くの人に知ってもらいたい!」と考えた場合、本を出すことはとても有効な手段だと感じます。
なので、たとえ苦しい道のりであったとしても、多くの人に知ってもらいたい想いや考えがある方は、チャレンジしてみるとよいのではないかと思います。チャレンジするだけの価値はあると思います。
>店舗ビジネスをしている人、やろうとしている人へ
これまで20年以上にわたり店舗ビジネスに携わってきた経験から、基本的に人を介してサービスを提供する店舗ビジネスを営む企業が中長期的に経営を持続・発展させていくためには、「“会社の発展”と“社員の自己実現”の両立=会社と社員のWin-Winの関係性」が不可欠だと確信しています。
今後経営をしていく中で、是非この関係性を実現するための方法を探求していってほしいと思います。
「21世紀型のれん分け」や「小規模フランチャイズ」の考え方が、その一助となれば幸いです。
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