前回のブログで井手さんには、これまでのキャリアに関して伺ってきました。
今回は、ビジネス書要約サービスのフライヤーに移ってから見える読書に関すること、そして、ご自身の趣味である「ラーメン」「音楽」への想いも含めて、伺っていきます。
―前回はありがとうございました! WOWOW、あさ出版を経て、フライヤーに移られた経緯を聞かせていただき、胸熱でした。今回はフライヤーから見える出版業界、そしてご自身のキャリアに関して伺っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。
お願いいたします。
―早速ですが、出版社でも書店でもない立ち位置・web業界からみる読書に関してぜひお聞きしたいです。
まず、これはIT業界にいるからとかではなく、出版業界とくにビジネス書の売れ行きに関しては「少ない」と感じていました。
あさ出版に入社した際に、「ビジネス書は1万部売れたら「売れ行き良好書」となり、10万部売れたらベストセラーである」とレクチャーを受けました。
新卒が毎年50万人から60万人ほど就職をすることや、生産年齢人口が6000万人近くいることを考えたときに、ビジネス書のポテンシャルはなぜこんなに低いのかなと驚きました。
ただ、自分がそれまで10年近く働いてきた社会人生活を振り返ると見えてくるものがありました。
自分は文学部出身です。
結構本も読んできた方だと思います。
ですが、社会人になってからは、その間忙しかったこともありますが、書店にいって「ビジネス書」を買って読むという発想自体がなかったのです。
「ビジネス書は難解だから読みたくない」とか「自分は小説が好きだから」といった理由ではなく、そもそもビジネスパーソンであるにも関わらずビジネス書を読むことを検討したことすらなかったんですね。
本が好きで、就職活動で出版業界を受け、転職先に出版社を選んだ自分でさえ、そうなのだから、ビジネス書が1万部で売れ行き良好書になるというのもしっくりきました。
―確かに、僕も大学生の時は知らなかったです。1社目で出版業界に入社し、競合他社のやり手の営業マンがビジネス書の出版社だったことをきっかけに読み始めましたが、学生の頃はそういったジャンルがあるんだということすら知らなかったですね。
あとはネーミングの問題も少しあるかもしれませんね。
「ビジネス書」と聞くと少し難解なイメージを持たれてしまうのかもしれません。
ですから、ビジネス書に限って言えば、「読書離れ」などではなく、そもそも「知られていない」「読書の入り口に立っていない人が多い」というのが売れ行きがあがらない一因かもしれないなと考えています。
10万部を出しても20万部を出しても、まだまだマーケットが小さいなという感覚は拭えませんでした。
―確かに、他業界からうつられてきた方々にとってみれば、マーケットサイズが小さいなと思ってしまいますよね。
いままでは、出版業界に移っての話でしたが、フライヤーという立ち位置で知ることができたこともあります。
まずフライヤーのサービスですが、ビジネス書の要約を配信しています。
もちろんそれらの要約を掲載する際には出版社に対して、掲載許可をいただいています。
会員登録をしてくれた有料会員に向けて、ビジネス書の要約を配信しているので、利用している顧客は30代から40代のビジネスパーソンが中心です。
そして、弊社では利用者アンケートを定期的にとっています。
フライヤーに登録をする会員ですから、当然読書に対してある程度の興味を持っている方々が多いのですが、そこで驚いたことがありました。
多くの会員の方が「ビジネス書を読んだことがなかった」と答えたことです。
そして、「フライヤーの要約を読んで初めてビジネス書にふれました」という声も多かったのです。
―えっ! ビジネス書要約サービスに登録をする方々が「ビジネス書を読んだことがない」と答えたのですか?
そうなんです。
こういったアンケートからもそもそも「読書離れ」なのではなく、ビジネス書は存在を知られていないということを改めて実感することになりました。
その中でフライヤーができることは、まずは要約に触れてもらい、ユーザーとビジネス書の接点を増やしていくことです。
あわせて、個々の本をPRするだけではなく、「ビジネス書」という存在自体の面白さや利便性を、出版社や著者ももっと発信していかないといけないのではないかなと考えています。
―その事実を知ることができたのは、多くの会社のコンテンツを要約配信するフライヤーだからだと思います。でかいですよね。おそらく出版社という立ち位置だと、業界全体というよりは、自社の置かれている環境という視点で見がちになると思います。
本の中にはいっている読者アンケートもありますが、あれは読んだ人向けのアンケートですからね。それももちろん大事ですが、読む前の方々の声を聞くことこそが読者拡大の道でもあります。
よく私はメディアからの取材に「フライヤーはデパ地下の試食みたいなもの」とお答えしていますが、その真意は「まず一口食べてから、判断してください」ということを言いたいのです。
あとは、「とりあえず一口食べてみませんか? 売り場にきませんか? いいもの揃っていますよ」と未来の読者に声をかける思いで運営しています。
フライヤーはもともと読書好きのコミュニティを作るためにローンチしましたが、今の私の想いは「新しい未来の読者さん集まれ」です。
―うわ! われわれ出版業界がまだまだやれていないところですね。僕も頑張らないとです。ちなみにアンケート結果というのは男女問わずですか?
はい、問わずにです。
というわけで、われわれは自社の本、他社の本問わず、「この本いいな! 知ってほしいな」という本に関しては情報発信をして、存在を知ってもらうということが必要です。
―使命感にかられました。。。まずなんとか本という存在を広げられるように私も頑張ります。 最後に、このブログはビジネスパーソンのキャリアや起業家の生き方に
フォーカスをしています。井手さんはフライヤーでも役員を務められていて大変なのにもかかわらず、ラーメンミュージシャン・井手隊長として「ラーメン」「音楽」など「出版」以外のところでも大きくご活躍されています。
その想いを伺いたいなと考えています。
まず、「趣味を仕事にする」これはこだわっています。
わたしはもうすぐ42歳になりますが、経験を重ねていけば、趣味は絶対にマネタイズできると考えています。
われわれビジネスパーソンは本業でどうやってマネタイズし、社会的な使命をまっとうするか、それを日々やっています。さらに、それを趣味にも応用することで、ただ継続して趣味として活動するのではなく、マネタイズレベルにまで持っていくことで大きな活動になり、最終的には社会によりよいものをとどけることはできるはずなのです。
―素晴らしいですね! ただ時間配分など大変ではないですか?
よく「ひとりで何人分も生きていますね」といわれることがあります。
ただ、私の考えは少し違っていて、趣味も本業もすべての好きが融合していまの自分がいるということを大切にしているのです。
わかりやすくいうと、「ラーメンを食べて、ササンオールスターズを聴いて、野球の話をしながら、本を宣伝する」のが井手隊長であるということです。
ここからが「ラーメンの自分」でここからは「本の自分」としてしまうと、それではなんだか自然に生きられないと思うんです。
すべてが自然に呼吸をするように融合するというのがこだわりです。
たとえば、ラーメンを食べにいくまえに書店があれば立ち寄って良好書をチェックしたり購入したりしますし、ラーメン店で野球がテレビで放送されていたらもちろん楽しみながら見ると思いますし、YouTubeの企画のことでひらめくことがあったら、ラーメンを食べながらでもそれらについて自然に考えると思います。
これが自然だと思います。
最近いくつもの趣味やキャリアをもち、それぞれで収益をあげていく「パラレルキャリア」という考えが出てきましたが、自分はそれをがちがちにかまえて「キャリアをいくつも作るぞ」ではなく、趣味や好きなことを自然に続けていくことがパラレルキャリアにつながるのではないかと考えています。
―けっこうみんな収益を上げようとして焦っちゃうのかもしれないですね。だからこっちのキャリアではこう、こっちはこうとなってしまうのかもしれませんね。
なるほど。
でもそれだからこそ、「そもそも我々はビジネスパーソンであって本業の収入があるのだから焦ることはない」ということを言いたいですね。
好きなことをつきつめていけば、それは楽しいですし、それだからこそ磨かれるのだと思います。
「好きなラーメンじゃないけれども、○○万円お支払いするので、この記事をお願いします」的な案件は私は絶対に受けません。
たしかに趣味を収益化できた方がいいけれども、それは人生の本質ではありませんよね。
そして、本業をしっかりやっていれば安定して収入は入ってくるわけだから「自分の考えとは違うな」と思えばそういった仕事は受けなくていいのです。
―なるほど。確かにそうですよね。本当にキャリアを上げていくのなら、好きで好きで仕方のない案件で、ブラッシュアップしていくほうが、真に磨かれると思います。
井手さん長い時間本当にありがとうございました。業界について、キャリアについてとても勉強になりました。
これからもどんどん発信していきましょう。
よろしくお願いいたします。
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