キャリア

定年後の生き方に悩んでいる人は、起業という選択肢を考えよう

以前、インタビューさせていただいた大杉潤さん。

定年後の生き方・ひとり起業をした背景などを語っていただきましたが、この度、『定年前後の生き方に悩んだらこの1冊! 定年ひとり起業 生き方編』を出版しました。

シニアの働き方にスポットライトを当てる訳を聞きました。

万全の状態で起業をしたわけではない!

 私は33年8カ月間、勤め続けた会社員を卒業し、定年年齢60歳を待たずに57歳で独立起業しました。当時は地方に本社のあるメーカーに単身赴任で勤務していて、転職活動もままならない状態でした。また年齢的にも厳しい条件になると予想できたので、「それなら思い切ってこのタイミングでフリーランスになろう」と決意したのです。

 

決意してからすぐに家族にはその旨を伝え、その後半年間、できる限りの準備をして2015年11月に予定通り会社を退職して起業しました。

長男は独立して家を出ていましたが、長女は大学1年生。

大学生活の残り3年分の学費だけは別に取っておいて、そのほかにはほとんど貯えもない状態でしたので、打ち明けた時には当然、家族は全員大反対。

それを半年がかりで誠意をもって説明・説得してきました。

妻も最初は「いずれ冷静に考えて起業は諦めるだろう」と踏んでいたようです。それでもなかなか準備をやめない私を見て、夏頃から「どうやら本気らしい。止めても難しそうだ」と覚悟を決めてくらたみたいです。

 それから8年近くになりますが、あの時の決断を、今は本当に良かったと思いっています。自分なりに思い描いていたフリーランスとしての理想の働き方になっているからです。

起業してよかったと感じた3つのこと

1番良かったと思う点は、「100%好きな仕事しかしていない」ということ。ストレスはまったくありません。もちろん、うまく行くこともいかないこともありますが、すべて自分の責任なので、納得感があるし、失敗から学んで、さらにビジネスを伸ばすことができます。

 その次に良かった点は、妻が社長の合同会社(ファミリーカンパニー)を設立し、夫婦の共同事業として起業したので、二人の役割分担が明確にできて、一緒にビジネスを考えていけることです。

社長である妻が経理・会計・資金繰りなど管理部門を担当、私はファミリーカンパニーの外注先フリーランス(個人事業主)として、営業・提携などの活動とコンテンツの制作・納品、顧客フォローなど現場業務を担当しています。この役割分担のスキームが私たちのビジネスの肝になっています。

 3番目に良かったと思う点は、自分たちで仕事の内容やペースを決めていけること。もちろん、世の中にニーズが無いことをしていては、仕事はまったくいただけないでしょう。

でも、そこをしっかりと考え、真剣に、戦略的に準備・努力していけば、必ずお客様が求める付加価値を提供し、ビジネスを伸ばすことができるという確信が私にはあります。

定年後の起業に必要なことはこの3つ!

簡単に結論を言うと、次の3つに集約されます。

  • 好きなことを仕事にすること
  • 自分の強み・専門性を3つ組み合わせて、オンリーワンの存在になること
  • 初期投資を抑え、長く働き続けるための戦略を立てて実践すること

 1番目からポイントだけ説明すると、「好きなこと」を仕事にすれば、結果が出なくても続けることができます。

 起業して2年間は結果が出なくてなかなか安定して稼ぐことができない人がほとんどなのです。私もそうでしたし、私の周りにいるフリーランスの皆さんも皆そうです。なぜか、続けていると3年目から結果が出始めて軌道になる方が多い。

 ただ2年も結果が出ないと続けられず、諦めて会社員に戻る方の多いのが実情です。ところが好きなことを仕事にしていると、続けやすく、試行錯誤を2年以上続けられます。

 たぶん、覚悟の度合いも違うし、表情に楽しさが自然と表れてお客さまや提携先を引き寄せてくるのではないかと私は思うのです。なので、好きなことを仕事にするのはとても大切。残りの人生を愉しく、幸せな生活にするためにも必須です。

 

 2番目のポイント、3つの専門性の組み合わせですが、これはリクルート出身で、民間人として初めて公立中学校(杉並区立和田中学校)の校長を務めた藤原和博さんの「クレジットの三角形」理論を実践したものです。

 この方法は再現性があって、私だけではなく、多くの有名人、一般の会社員の方々が実践して成功しています。1つの専門性を身につけるには約1万時間が必要ですが、これを身につけると100人に1人という希少性になります。

 これだけではライバルがたくさんいるので会社にでも所属していないと食べられません。ただもう1つ別の専門性を1万時間かけて身につけると2つの専門性の掛け合わせで、1/100×1/100で、1万人に1人の存在になれます。これだと会社の中で年収は上がるけどまだ独立して食べていくのは難しい。そこで、さらにもう1つ、3つ目の専門性を身につけて、1/100×1/100×1/100として3つの専門性を組み合わせると、100万人の1人というオンリーワンの存在となり、独立して食べていけるという理論です。

 藤原和博さんは、①リクルート流営業・プレゼン、②リクルート流マネジメント、③教育改革実践という3つの専門性を組み合わせてオンリーワンの存在になりました。今、1年間に生まれてくる赤ちゃんは約80万人なので、100万人に1人という希少性は同年齢・同学年でたった1人の存在ということです。専門家(プロ)としての専門性という「信用」を3つ組み合わせるので「クレジットの三角形」と名付けられました。

 

 私 大杉潤の場合は、①銀行員としての財務戦略スキル、②1万冊を超えるビジネス書の多読、③多彩な情報発信力(ツイッター、ブログ、フェイスブック、インスタグラム、YouTube動画、音声配信)の3つを組み合わせて、オンリーワンの研修講師、コンサルタント、ビジネス書作家として活動しています。

大杉潤のyoutubeビジネススクール

Twitterを3,702日(約10年1ヶ月)連続ツイート、Blogを2,297日連続更新(約6年4ヶ月)している大杉潤が、5G時代の到来を迎える情報社会へ対応するため、2020年2月11日よりYouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』をスタートします。 大杉潤公式ブログにて「毎日1冊ビジネス書の書評」を公開してきたものを、YouTube動画にて発信していきます。 …

 

 3番目の「初期投資を抑え、長く働き続ける戦略」ですが、とにかくリスクを取らないこと。

 起業で1番間違えることが多いのが「お金のリスク」。

 売上は最初から安定的に上がることはないので、とにかく固定費を抑えること。

 そのために、事務所を借りない、人を雇わない、在庫を持たない。とくに事業を立ち上げた時は、売上がほとんど利益になるスリムな体制にしたビジネスモデルにすることです。講師業、コンサルティング業、執筆業など私がやっているビジネスは基本的に私の人件費がコストの大半を占めます。

 今はビジネスが軌道に乗ってきたので、事務所も借りていますし、外注費をかけたり、オンライン関係の設備投資をしたりもしていますが、起業当初は極力、お金を使わないようにしていました。起業家仲間によく聞く話は、「信じられないスピードで預金残高が減っていく」ということです。私は預金残高自体がほとんど無かったので、使いたくてもお金を使えなかったというのが正直なところですが。

トリプルキャリアで定年後の人生をバックキャスティングせよ

 

長く働き続ける戦略の中味ですが、私は「トリプルキャリア」という考え方を以前から発信していて、この「定年ひとり起業三部作」の底流を流れる基本コンセプトでもあります。

 新刊の『定年ひとり起業 生き方編』(自由国民社)には、当初から進化してきた「トリプルキャリア」のコンセプトと、上記に記した「起業してビジネスを伸ばすためのポイント3点」を改めて整理して書きました。

 同書第1章は「働く期間を3つに分けるトリプルキャリア」と題して、長く働くためには以下の3つに分けて「働き方をシフトしていく」ことが必要だと説明しています。

  • ファーストキャリア:会社員として「雇われる働き方」
  • セカンドキャリア:定年のない「雇われない働き方」
  • サードキャリア:75歳からの理想の働き方(ライフワーク)

 1番目の会社員のメリットは収入の安定と厚生年金の確保、デメリットは定年があること。

 2番目が「定年ひとり起業」で、メリットは定年がなく何歳まででも働ける、好きなことを仕事にできること、デメリットは収入が安定しないこと。

 なので、複数の収入源を持つ「収入の複線化」がポイントになります。

 3番目は、複線化した仕事をライフワーク一本に絞って、健康面・体力面で無理をせず長く働くことを重視する理想の働き方をするもの。キーワードは「IKIGAI(生きがい)」で、①好きなこと、②得意なこと、③世の中の役に立つこと、④収入が得られること、の4つが重なることをライフワークにすることです。

 人生設計において特に大切なのは、このサードキャリアでのIKIGAI(生きがい)やライフワークを40代、50代の会社員(ファーストキャリア)のうちから考えておくこと。

 最終のゴール(目標)を定めた上で、それを実現するためのセカンドキャリア(定年ひとり起業でのビジネスモデル)やファーストキャリア(会社員での強み・専門性)を考えるバックキャスティングの思考法です。

 これを「戦略的思考」と言い、多くの企業で経営戦略や事業戦略を立案する時に行っている思考法です。

 

 私は研修講師として毎月登壇していますが、最も多いのが経営戦略・事業戦略の研修で、最近急拡大しているのが「50代会社員向けライフキャリア研修」です。

 実はどちらもまったく同じ思考法なのです。会社の経営戦略も個人の人生の戦略も、オンリーワンの存在として差別化し、自分の強み(これをコアコンピタンスと言います)で勝負する。その前にまずは「自分はなぜこの世の中に存在するのか」というWHYであるミッション(神から与えられた使命、社会的使命)を考え、あるべき姿(WHAT、ビジョン)を描き、それをどう実現するかという戦略(HOW)の順番で考える。これが戦略的思考なのです。

 

 こういう話をした時に、1番多いのが、「そうは言っても大杉さんだから起業してうまく行ったのであって、普通の会社員には無理だ」という声。そうした声にお応えして、新刊の『定年ひとり起業 生き方編』(自由国民社)では、それが誰にでもできる「再現性のある方法」だということを分かってもらうために、事例も入れて解説しました。キーワードは「シームレス」です。

副業は会社員の時にやっておこう!

 できれば、会社員のうちに副業をいろいろやってみて、自分が好きで得意な副業を見つけ、副業の収入が本業を上回ったら会社を辞めて起業する。これなら私が実践してきた起業よりさらにリスクは少ない。第1章の最後にはコラムとして、私が企業の時に参考にした『今すぐ妻を社長にしなさい』(サンマーク出版)の著者で、副業の天才である坂下仁氏へのインタビューを掲載しました。

 坂下氏は自らの経験・ノウハウを伝授する場として一般社団法人 お金のソムリエ協会を立ち上げて、その会員が続々と副業を軌道に乗せて会社を辞めて起業を成功させています。

 私がシリーズ3冊で伝えてきた「定年ひとり起業」というライフスタイルは、副業が解禁されつつある現在では、私が起業した8年前よりずっとスムーズに起業できる環境になっています。まだまだ副業禁止の会社もありますが、それならペンネームやビジネスネームで情報発信をして準備し、妻が社長のファミリーカンパニーで副業をする手があります。

私が起業準備をしていた時は、そこまでの環境が無かったので、会社員時代はブログやSNSで情報発信をするだけで、お金を稼ぐことはできませんでした。今なら会社員から副業を経て「シームレス」に起業ができるのではないでしょうか。

 後半では、第2章~第5章について、これまでのシリーズ2冊では紙面の都合上、詳しく書けなかったテーマについてお話しします。

大杉潤さんのプロフィール

1958年東京都生まれ。フリーの研修講師、経営コンサルタント、ビジネス書作家。
早稲田大学政治経済学部を卒業、日本興業銀行に22年間勤務したのち東京都に転職して新銀行東京の創業メンバーに。人材関連会社、グローバル製造業の人事、経営企画の責任者を経て、2015年に独立起業。

年間300冊以上のビジネス書を新入社員時代から39年間読み続け累計1万冊以上を読破して、約2,500冊の書評をブログに書いて公開している。
静岡放送SBSラジオ『IPPO』に毎月レギュラー出演のほか、NHK『あしたも晴れ!人生レシピ』、テレビ朝日『スーパーJチャンネル』に出演。
妻が社長の合同会社ノマド&ブランディング・チーフコンサルタント、株式会社HRインスティテュート・アライアンスパートナー、リ・カレント株式会社・プロフェッショナルパートナー、株式会社カインドウェア顧問。

著書に『入社3年目までの仕事の悩みに、ビジネス書10000冊から答えを見つけました』(キノブックス)、『定年後不安 人生100年時代の生き方』(角川新書)、
『銀行員転職マニュアル 大失業時代に生き残る銀行員の「3つの武器」を磨け』(きずな出版)『定年起業を始めるならこの1冊! 定年ひとり起業』『定年後のお金の不安を解消するならこの1冊!定年ひとり起業マネー編』

WEBサイト http://jun-ohsugi.com/

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