今日は、2023年3月28日に『ビジネスで大切なことはみんな吉祥寺の焼き鳥屋で教わった』著者の玉岡一央さんに出版のお話を聞いていきます。
作家の玉岡さんは、ユニバーサル・リアルティ株式会社という吉祥寺エリアを中心とした不動産仲介業を行う会社の代表取締役です。
中堅の不動産会社を経て、三井不動産リアルティ株式会社に転職し、営業職として5年連続営業奨励賞を受賞しました。
その仕事術の根本を作ったのが、小さいころ吉祥寺ハーモニカ横丁で、お客さんに愛され続けたお店を運営していた父親にルーツがあることに気づき、『ビジネスで大切なことはみんな吉祥寺の焼き鳥屋で教わった』という本を出すきっかけになったようです。
今日は下記の事項を聞いていきます。
・なぜ本書を出そうとおもったか
・吉祥寺エリアの本をだしてよかったことは
・執筆において苦しかったことは
早速話を伺っていきましょう。
なぜ本書を出そうと思ったか
ビジネスパーソン時代に、一プレイヤーとして実績をあげていた立場から管理職にかわるときがありました。
その時、部下に自分のメソッドをつたえるのに相当苦労しました。
「名プレイヤーは名監督にはなれない」ということがよく言われますが、本当にそういったことを実感しました。
プレイヤーとして実績をあげていたときは、「なぜ自分が実績をあげられるのか」ということを体系立ててまとめておらず、部下に「こうやったらいいよ」ということをなかなか伝えられなかったのです。
その時に「なぜ実績をあげられたのか」振り返ると、父親のお店で学んだ幼少期の頃に思いあたりました。
小さい頃は父親のお店を手伝うなかで「当たり前にやっていたこと」で気づかなかったけれど、大人になって自分の強みが幼少期からやっていた父親の仕事術に学んでいたものということに気づいたのです。
たとえば、本書の1章にある、
「うまくいかないときこそ「笑顔」を大切に」
とか、
「すべては相手を知るところから始まる」
とか、
「ありがとうの大切さ」
などは飲食店では一期一会が大切なため、当たり前にやっていることですが、自分はそれらを愚直に当たり前にやってきて実績をあげていることに気づいたのです。
そういったビジネスに大切なことを、まとめて伝えた結果、部下育成もうまくいきました。
その経験から「部下育成に悩んでいる人」に向けて本書を書こうと思ったのです。
とはいえ、居酒屋で学んだことが、仕事に生きるということを伝える必要もあるので、序章に「大将の焼き鳥屋を繁盛させた8つの変なルール」といれ、類書とは違う本であるということを書かせていただきました。
吉祥寺エリアの本をだすときに気を付けたことは?
吉祥寺は、飲食店の激戦区です。
そのなかで父親の焼き鳥屋はハーモニカ横丁で35年ほど営業を続けてきました。
わたしは吉祥寺の物件を常日頃から手掛けているので、街の様子がわかるのですが、
はやいと1年くらいでお店が入れ替わります。
吉祥寺駅の乗降客は37万人とボリュームがあるほう(新宿駅が350万人以上)なのですが、街の人口自体は14万人ほどでさほど多くありません。
「乗降客が多いエリアだから」といっても、仕事をしているお昼時に人口が増える傾向にあるため、長く居酒屋として吉祥寺で選ばれ続けていくのは大変なのです。
そういった父親がやっていた居酒屋のすごみが、読者に伝わるようにしなければならないので、目次や構成には気を配りました。
目次は以下の通りです。
序章 大将の焼き鳥屋を繁盛させた8つの変なルール
第1章 焼き鳥屋で学んだ「仕事選び」7つの教え
第2章 焼き鳥屋で学んだ「コミュニケーション」6つの教え
第3章 焼き鳥屋で学んだ「自己研鑽」6つの教え
第4章 焼き鳥屋で学んだ「自己管理」4つの教え
タイトルは編集者が考えたもので、吉祥寺で選ばれ続けたお店の仕事術で成功した著者の仕事術本ということがわかるものになったと思います。
吉祥寺エリアの本をだしてよかったことは?
まず、吉祥寺駅にある書店さんへ大々的に展開していただけたことです。
本を出したからといって、すべての本が大きな展開をしていただけるわけではありません。
本は1日に200冊以上出版されると言われていますから、実績がでなければ、1週間くらいで入れ替わってしまいますし、有名著者の本もあるわけですから、まずはそれらの方々の本が大きく並ぶことになります。
そういったことを考えると面チン、平積みにされることは奇跡だと思うのですが、吉祥寺とタイトルについているため、吉祥寺駅まわりの本屋さんでは、一等地に置いていただくことができました。本当にありがたいことです。
ちょうど村上春樹さんの新刊がでた時期とも重なり、多くのお客様にみていただけることとなり、それもうれしかったですね。
また、私は吉祥寺エリア中心の不動産仲介をしています。
売り主や買い主から信頼をいただくためにも、「吉祥寺エリアは知り尽くしている」というブランディングが必要です。もちろん常日頃、土地を見て回り、観察し、
「利便性のあるエリアはどこか?」
「人気のあるエリアはどこか?」
「暮らすのにコスパのいいところはどこか?」
などを分析していることは大前提です。
ただ、こういった活動は、口で伝えるだけでは、なかなか理解してもらえません。
対面の商談の時間内ではなかなか伝えきれない部分ですし、お客様との接触回数が増えていって初めて信頼につながることでもあるので、いきなり自分のストーリーを伝えるのは難しいのですが、本があれば、そういったことを話さなくても理解してもらえます。
私の会社に置いておくことで、「吉祥寺のことなら『ビジネスで大切なことはみんな吉祥寺の焼き鳥屋で教わった』を書いた玉岡さんだよね」となりますし、お客様と太くつながるために名刺代わりにお渡しすることもできますから。
執筆において苦しかったことは?
たくさんありますが、やはり構成です。
普通のビジネス書とは違って父親のお店がなぜ繁盛したのか、どこかすごいのか、そしてそのメソッドを転用してビジネスで成功するのかどうか、ということは順序だててつたえないと、読者の方に読んでもらえないと思いました。
実際編集者からも「『A→B→C」という順番で書いてください」といわれて進めたのですが、進行する過程で「やっぱり「B→A→C」の順番が伝わりやすいですね」と構成チェンジの指示をいただいたりしました。
一筋縄ではいかない、出版の厳しさを知ることになりましたが、とても勉強になりましたし、「これで読者の方が読みやすい形になるのであれば」と燃えました。
それともう一つ。
企画が通ったのは2年前なのですが、今お話しした構成を考えることがかなり大変だったため、出版されるまでに時間がかかりました。
しかし、丁寧にすすめないと、当然誤字脱字があったりしますし、読者にわかりづらい構成になってしまいます。
通常の仕事とは違い、じっくりとやらなくてはならない仕事であることを認識して進める必要も感じました。
玉岡さんの情報はこちら