メンタル

「できないところと向き合う」「行動する」の二刀流

今回は、話し方のプロに話を聞いていこうかと思います。

昨年『1日1トレで「声」も「話し方」も感動的に良くなる』(日本実業出版社)を出版した、阿部恵さんと「独立・起業」に関して対談します。

アナウンサーとして活躍されてきた阿部さんがなぜ独立しようと思ったのか、

そして、独立までどういった経歴をたどったのか、

具体的に語っていただくことでキャリアの築き方のヒントになると思います。

阿部恵さんのプロフィール

神奈川県川崎市生まれ。スピーチコンサルタント。

中部日本放送(CBC)元アナウンサー/元国会議員政策担当秘書/江戸川大学非常勤講師/合同会社Confill代表。

「話が苦手」「人前でどう話したらよいのかわからない」ビジネスパーソンの悩みを解消するスピーチコンサルタント。

国会議員政策担当秘書時代、演説に困り涙する地方議員の姿をきっかけにスピーチコンサルタントの道へ。

スピーチ指導は元総理夫人、市長、議員、経営者、ビジネスパーソンなど6000人超。自治体や大手民間企業で講演・研修講師も務める。早稲田大学大学院卒業(国際関係学修士)

ー本日はお忙しいところインタビューにご協力いただき深謝いたします。 阿部さんには独立することについていろいろ伺いたいのですが、そもそもなぜアナウンサーになろうと思ったのですか?

野球部のマネージャーをしていた高校時代、高校野球夏の大会で新聞社の公式スコアラーのアルバイトを頼まれたことがきっかけです。

実は、スコアをつけなくちゃいけない試合中に居眠りをしてしまい、記者から叱られたんです。

その時「この新聞を見てごらん。あなたがつけた試合のスコアが明日の新聞に出るんだよ。僕一人だってできるのに、なぜあなたにお金を払って頼んでいるかわかる? ミスがあってはいけないからダブルチェックしているだ」と、言われました。この言葉がずしっと刺さったんですね。

間違いの許されない緊張感、アルバイトといえども報道の一端にかかわっている責任感、やがて「こんな報道の現場で仕事をしたい」と、記者を目指すようになりました。

ーなるほど! 指摘された方も学生に対してジャーナリズムを形として伝えたかったんでしょうね。新聞や本というのは、モノとして伝えられる強さがありますからね

きっかけはもう1つあります。

ある事件のTV報道が加熱し、後追い自殺が続出した時に、放送する側の責任について、あるニュースキャスターに手紙を書いたことがあります。

そうしたら、直筆で返事をいただきました。

TVの向こう側にいる人も、視聴者であるこちら側と向き合おうとしてくれていることに感動して、新聞ではなく、「放送」をめざすようになりました。

ものまね番組にも学生時代出ていましたから、自分の考えや「ノリ」的にもTV向きかなと考えるようになったのです。

ーそういったことを若いときにやっていたのはすごいです! ぼくは大学3年の時に「新聞記者になりたい!」とおもったのですが、そこから勉強して、実際の体験をして、志望動機を固めるまでいけませんでしたから。。。

マスコミは倍率が高いですからね! 当時はネットがまだ普及していませんでしたから、なおさら倍率は高く、本気でやりたい人はかなり前から動いていましたね。

ー自分の甘さに改めてカツを入れてやりたくなりますね(笑)。さて、阿部さんは中部日本放送(CBC)のアナウンサーになったんですが、どういったお仕事をされていたのでしょうか?

ニュース、レポート、スポーツ、バラエティー番組と幅広いジャンルの仕事をしました。

政財界だけでなく、中日ドラゴンズの選手、監督、イチロー、福山雅治、ジャニーズ等々、たくさんの著名人と共演やインタビューもおこないました。

名古屋の局でしたが、TBSの全国ネットの番組に毎朝出演するなど、「聞く」「話す」といった今の仕事の礎となる部分を体得しました。

ーすごく華々しいご実績ですね! そういった輝かしい世界からどうして独立をしようと考えましたか?

名古屋(ローカル)の局だったからかもしれませんが、男女雇用機会均等法施行後の第1世代(91年入社)ゆえ、結婚、出産後も活躍している先輩(ロールモデル)がまだいませんでした。

女性の先輩は辞めたり、仕事の負担が軽くなる他部署へ異動になったり。

そんな時、たまたま日経新聞に出ていた公募広告を見て、あるスカラシップに合格しました。アメリカに留学し、その後、東京でフリーアナウンサーとなったのです。

ところが、出産をしたら仕事が全部なくなってしまいました。

TVをつければアナウンサーの友達がキラキラ輝いている。それにひきかえ私は・・・と、産後うつに。

母親が笑わないからか、子どもも笑わなくなりました。

「このままではまずい」と思って、飛び込んだのが国会です。

実は、議員秘書となり、政策担当秘書資格も取得したんです。

そこで、「演説できない」「誰も聞いてくれない」と国会議員に悩みを吐露していた地方の自治体議員の女性たちの涙を見て、「これまでの私の経歴なら何か役に立てるかも」とスピーチ指導の道を歩むことになりました。

余談ですが、当初は国会も立法もまるでわかりませんでした。

とりあえず飛び込んだだけで、スピーチ講師になる転機となったんです。

また、議員秘書を継続しているうちに、新聞の2面(政治欄)の取材源はどこかまでわかるようになりました。

今では、選挙に出ようとする人たちへの演説指導、大学で秘書検定を受ける学生たちへの指導と、ここでの経験が私にとっての大きな強みとなりました。

ーなるほど、まず出産後も働きたいという渇望があって、そして、ジャーナリズムに関わっていた過去の経歴の延長上で議員秘書になられたわけですね。そのあとスピーチ講師として独立をされたのですか?

いえ、その前にスピーチ会社で実際に働きました。

ビジネスモデルを知りたかったのです。

そこでスピーチトレーニングを受ける人たちのニーズや、その会社では受講生のニーズを満たせない部分等がよくわかるようになりました。

また、あくまでも一講師。

会社から割り振られて初めて仕事(=報酬)が得られるモデルでした。

ベテラン講師になると時給が高いので、スキルや経験はあってもコマ数を調整されるようになったのです。ですから、受け身の立場ではなく、そしてもともともっと制約のない働き方がしたいと思っていたので、独立を決意しました。

ーなるほど。阿部さんのお話をうかがっていると、「行動」の大切さがよくわかります。

最近ではこういったキャリアを計画的偶発性理論とも呼ぶらしいのですが、そもそもキャリアはやってみないとわからないものですし、経験するから積み上げられるもの。「行動」という軸はわれわれビジネスパーソンも持っておかなければなりませんね。

ここで、独立してつらかったこと、よかったことを聞いておきたいですね!

つらかったことは「集客」です。

とくにSNSが良くわかりませんでした。

使い方も発信の仕方もわからず、広告に出てくる起業塾などにも通いました。 いまでも試行錯誤しております!

またそれに関連することですが、「営業」も大変でした。

これまで「女子アナ」「スピーチ会社の一講師」だったので、常に誰かが仕事をとってきてくれていました。もちろん独立後は自分で営業、クロージングしなくてはならず、これがなかなかできませんでした。

「このサービスがあなたに向いていますよ」

「受講した方がいいですよ」の一言が言えないのです。

「お金がない」と言われれば「では、状況がよくなったらまた声をかけてくださいね」なんてカッコつけて、売り上げが上がらなかった。

そこで、営業トークの講座に通い、クロージングの練習をしたのですが、これは大いに役に立ったのです。

ートークの達人の阿部さんが営業トークの講座に通われたとは! ただ、そこが阿部さんのすごみでもありますね。「足りない」ところを補おうとすることの重要性を感じます。そしてやったら向いているかもしれません。可能性を探る意味でも自分がやったことのないもの、それゆえに足りていないスキルに向き合うことを考えてみてもいいかもしれませんね。

ありがとうございます!そして、さいごに何といっても固定費です。

法人化してからは保険料、税金、顧問税理士等々、月々のコストがかかります。

法人によっては、翌月締めで翌々月払いのようなところもあるため、キャッシュが回るかどうか不安になることもありました。

ーやはり最初は1年くらい無給でも食べられるお金はためとかなきゃですね。。。

その通りです!

以上がつらかったこと。

良かったことをこれからお話しします。

まず、「時間管理を自分でできる!」ところです。

子どもの保護者会など予定がある日はあらかじめスケジュールをブロックし、

仕事を入れないようにできます。

息子のお弁当も作っていたので、極力、早朝の仕事や勉強会も避けていましたが、これはコンサルタント・起業家だからできることだと思います。

次に「大手法人から仕事の依頼が来るようになった!」ことです。

法人化したきっかけは、ある大手企業さんから「今後も取引したいので法人化してはどうですか?」と提案していただいたためです。上場企業は個人事業主とは取引しないところが多いので、法人化してからは大手からの仕事も増えました。

そして大きいのは、「お客様の喜びを一緒に共有できる!」ことです。

一人のお客様と継続してお仕事をすることになるので、その方のスピーチや事業がうまくいった時、そして、喜んでもらえた時は、我が事のように嬉しいです。

ーそこは確かに起業家にしか味わえないところですよね。私も「本読みました!人生変わりました!」というレビューをうけるとどんなに苦しくても辛くても、疲れやストレスが吹き飛びます。それがSNSで可視化されているため、書名検索してしまうくらいです(笑)

あはは(笑)でもうれしいですよね。最初は資金のこととかでいっぱいいっぱいですが、本当はこういう感動を味わいたいからやってるんですよね。

最後に、好きな人としか仕事をしないため、ストレスフリーであることもいいことですね!

ーありがとうございます!つらいこともあるけれど、本当の楽しみを追い求めている姿に感動しました。さて、さまざまなキャリアを経験された阿部さんにこそ伺いたいのですが、起業家として成功するコツ教えていただけますか?

独立して成功している仲間を見つけること、そして、正しい情報を得ることです。

厳しい言い方にはなるかと思いますが、成功していない人に成功するためのコツを聞いても、答えは持ち合わせていないと思います。

私もお金をかけて起業塾やセミナーにいくつも参加しましたが、今思えば、回り道だったかなと思っています。

それよりも、地道に会社を継続している方の話が私には一番役に立ちました。

その方々の助言によって、自分の仕事も成長できたと思います。

ーありがとうございます。続いて、これから独立・起業しようとする人にメッセージをお願いいたします。

いきなり周辺環境を全部整えようとせず、予算をかけなくてもできるところから小さく始めればリスクも少ないと思います。

独立して成功している人、自分と同じような業種で独立している人などに話を聞いて、まずは情報収集から始めると良いと思います。話を聞くのはただですが、もちろん熱意をもってやってください。聞く人のプロフィールを調べておく、著作があれば読んでおくといったことはマストです。そして、しっかり学んでください。

「好き」を仕事にできたら良いですよね!頑張ってください!

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