メンタル

人の笑顔を見たい

さて、新年2回目です。

ちょうど私の担当編集書籍『人の話は、ただ聞けばいい』が2022年12月27日と最近出たばかりで、ホットな状態だったので、著者である石川さんにお話を伺いました。「会いに行く牧師」という大変興味深いご活動をされている石川さんですから、2023年明けてすぐ読者のみなさんにも良いコンテンツを提供できるのではないかとも考えました。

石川さんのプロフィールはこちら。

石川 有生(いしかわ ともみ)
牧師。会いに行くキリスト教会の牧師。
1989年、神奈川県生まれ。東北大学理学部卒業後、牧師になるために神学大学院へ進学。
一般の教会の牧師を辞め、「会いに行く牧師」の活動を始める。現在は、「ともみん」と呼ばれ牧師活動をしている。

大学2年生の時に東日本大震災を経験し、直後からボランティア活動に参加し以後7年半の間関わり続けた。
その後、牧師として働く中でうつ病を3年半ほど患う。
震災や病気の時に助け寄り添ってくれる人たちの存在があったことが強烈に感謝として心に残り、
誰かのために生きたいとの思いをあらたにし「会いに行く牧師」を始める。

建物の教会堂を持たず、日本中どこにでも誰にでも無料で会いに行く活動で、年間500人以上に会っている。
また、場所にとらわれないオンライン教会やオンライン礼拝を時代に先駆けて始める。
毎週50名以上にオンラインで聖書の話を届けている。
キリスト教業界でも先駆的なこともあり業界紙「キリスト新聞社」、「クリスチャン新聞」などに取材される。
「キリスト教放送局FEBC」にも複数回出演。

それでは石川さんに話を聞いていきましょう。

―早速ですが、なぜ独立しましたか?

 理由はいくつかあるのですが、「雇われ牧師」だとやりたいことが全く出来ない現状がありました。

私は、信仰の有無は関係なく、困っている人や何かしらのケアが必要な方に寄り添いたいと思って牧師となりました。教会の牧師として求められる仕事は、教会の会員になっているキリスト教信者に向けた集会や活動がほとんどです。

もう一つは、過重労働などでうつ病となり一時休職し、その後退職をしました。

健康の回復を機に、組織に属さずフリーランスの牧師として活動してみようと思い、会いに行くキリスト教会を始めました。

―なるほど、キリスト教徒であるかそうでないかという枠組みではなく「困っている人」全般に寄り添いたいと思ったのがきっかけだったんですね!

そうです。「会いに行く」とはそういった意味を込めています。

―独立した時に大変だったことはなんですか? そして、独立してよかったことはありますか?

独立した大変さはほとんど感じませんでした。

むしろ、組織のしがらみや組織特有の人間関係の煩わしさから解放され、自由に活動できるという喜びが遥かに大きくありました。

もしかしたら、組織で働くことが向いてなかったのかもしれません。

独立当初から不思議と依頼はあったので、仕事がないといった大変さもありませんでした。 それこそ余計なストレスを感じずに働ける環境になったことで、働くことが楽しくなりました。

元々、働くこと自体はとても好きなので、独立して本当によかったです。

―心強い言葉ですね! 組織に合わないと石川さんはおっしゃいますが、転職する人のなかで多い退職理由が人間関係のようですから、多くの人に当てはまりそうです。さて、聞き方にフォーカスしようと思ったきっかけはなんでしょうか?

2つの体験が大きいです。どちらも自分の想像を遥かに超えた悩みを持つ方々と会う機会がありました。その方々の話は聞けば聞くほど、かける言葉が見つかりませんでした。

1つ目は東日本大震災です。

私が住んでいたのは、宮城県仙台市です。

住んでいた地域は幸いにも津波の被害にはあいませんでしたが、なんとかしなければと思い、キリスト教団体を通じて、ボランティア活動を始めたのです。

当時大学生でしたが、ほぼ大学にいかず避難所を駆け回る生活でした。

その際に震災の被害を受けた方が「家族を失い、家を失い、何もかも失った…」と語ってくれました。             

あまりのつらさに私は何と声をかけていいかわかりませんでした。

そして、2つ目は現在の活動「会いに行く」牧師を通じてです。

現在の活動を始めた頃は人の話を聞こうなんて考えたこともありませんでした。

むしろ、悩んでいる人がいたら気の利いた言葉をかけ、アドバイスをして解決しようと意気込んでいました。

しかし、それぞれの方々のつらい経験を聞いていくうちに、何も出来ない自分の不甲斐なさを感じました。 それでも「話を聞いてくださりありがとうございました」と言われました。

その後も、会いに行く活動の中で「話を聞いてくれてありがとう」と言われることが増えてきました。 すっかり自信を失くしていましたが、感謝の言葉を受けながら聞くことなら出来るかもしれないと思うようになりました。会いに行った人に教えてもらって、今があるように思います。

そして、2つの体験を通して、「解決策は自分は持ち合わせていない。しかし、聞くことで相手の方が感謝してくださるのであれば、聞くことに徹しよう」と考えました。

―人生を変える経験ですよね。石川さんにしかできないと思います。聞き方をこれまで磨いてこられたと思います。具体的に聞き方を磨いてよかったことは何でしょうか?

喜んでくれる人が多くいたことです。

これは本にも書きましたが、30代男性の方から仕事のストレスのことで相談を受けたことがあります。挨拶を交わしただけでその方はとてもまじめな方なんだなという印象をうけました。

中でも上司との関係が特に悩みだったのです。

成績が芳しくないときは長々と嫌味の含まれた説教をされ、プレッシャーをかけられていました。「そんな会社はブラック企業だから早くやめたほうがいいですよ」という声がのど元まで出かかりました。しかし、それでは聞いて感情に寄り添うのではなく、アドバイスすることになってしまいます。

さらに傾聴し、「その上司は最低最悪ですね」と彼に伝えました。

彼の気持ちによりそい、そして、私が感じたことを伝えたのです。

しかし、それまで、どんなに苦しくても会社や上司への愚痴を言わなかった彼が、そこからたまりにたまった愚痴を吐き出してくれたのです。

もちろん私はその会社に対して何かできるわけでも、上司と直接話して改善できるわけでもありません。

しかし、彼は私にあらゆる心にたまっていたであろう愚痴をすべて吐き出した後、とてもすっきりしていました。

そんな彼を見て私はうれしくなりました。まずは「自分自身を大切にしてもらう」わたしが多くの人に伝えたいことです。

こういったケース以外にも、親との相続のこと、結婚を迷っている方など様々な方の悩みを聞いています。

それぞれのケースで、悩みをただ聞くことに徹し、感謝の言葉をいただくたびに「聞くこと」には意味があり、目の前の人の助けとなっていることを実感します。

誰にも話せず悩んでいた方や、知らず知らずのうちにストレスをためていた方など様々な方がいます。

話し終えた時にスッキリした顔をし、話す前よりも少しだけ心を軽くした姿を見ると嬉しくなります。

私自身が、人の役に立つことで喜びを感じるタイプの人間だと思います。

聞くことを通して、誰かの役に立てているということを強く感じられるようになりました。 ちょっと大袈裟かもしれませんが、人は世界中で誰か一人でも自分のことを否定せずに受け止めてくれる人がいたら安心して過ごせると思います。

ドラえもんに出てくるのび太がまさにそうなんじゃないでしょうか。

お母さんに怒られ、学校の先生に怒られ、ジャイアンたちにいじめられ、本当に過酷な状況にいます。

それでも泣きながらのび太はドラえもんを求めると受け止めてもらいます。

その結果、のび太はある意味では安心して過ごすことができるのではないか。ドラえもんのひみつ道具以上にドラえもんの存在がのび太にとって大きな役割を担っているのだと思います。

聞き方を磨くことで、安心してもらい喜んでもらいたいと思っています。

―ありがとうございます!最後にこれからやりたいことを聞いてもいいでしょうか?

基本的には地道に今の活動を続けることです。

その上で、縁あって繋がりを持っている一人ひとりがさらに幸せになるためにできることをしたいです。

一つは、出会った人の生き方を何らかの形で応援したいです。過酷な環境にいる方には、そこを脱してほしいです。

また、何かにチャレンジする人がいれば心からエールを送りたいです。自分がやっているSNSやYouTubeも使いながら、頑張っている人たちの活動を宣伝しながら応援したいです。

石川さんのユーチューブ 2023年1月9日現在

そのためには、もう少し届ける力を養う必要がありますが。 もう一つは、あまり得意ではないのですが、牧師として聖書の話をすることを磨いていきたいです。

聖書が語る神の愛について話すことを通して、心救われる人がいたら嬉しいです。聞き方だけでなく、話し方を磨くことがこれからやっていきたいことです。

―石川さん、ありがとうございました! 次回は書籍を書いた思いを語っていただきます。

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